ねえ、きみがすき
曲が終わりを告げて、違う曲に変わったのが分かる。
あっ…これ、知ってる。
最初は鼻歌だったものの、シオンに聞こえないのをいいことに声を出して歌いはじめた。
目を閉じて歌っていると、シオンのピアノに合わせて歌えていることがとても嬉しくて、幸せな気分に浸れた。
そのあと、どのくらい時間が経ったのか分からないけど、ピアノの音が止まったので目を開いた。
「もう帰る?」
問いかけるとシオンは頷いてピアノの蓋を閉めた。
椅子から立ち上がった彼はやっぱり大きかった。
荷物を持って部屋を出ると、当たり前だけど校内にはもう全然人がいなくて。
ジーンとした空間にシオンと2人でいるってすごく不思議だと思った。
正門を出たところで立ち止まった。
「じゃあここで!」
【もう暗くなってきたし送る】
当然別々で帰るものだと思いこんでいたあたしに、シオンはそう言ってきた。