冷たい幼なじみが好きなんです


遥斗にとってはどうでもいいかもしれないけれど、わたしにとっては、大切な思い出……。

遥斗がくれた、たった1つの大切な物。

もし車やバイクに引かれて粉々になったりしたら、絶対嫌だ……!!

そんな思いでいくつかの街灯と車やバイクの光を頼りに、必死に時計を探し求めた……。




「……………なんでないの……」


──もう一時間は経っただろうか。


体力もなくなり、坂道をゆっくりと下っていく。


「………はあ」


何度目の、ため息だろうか。


わたしは物を落とす天才かもしれない。


本気で心から自分に呆れる。


今なら遥斗の気持ちがわかってしまう。


わたしも、こんな自分が大嫌いだ。


遥斗から嫌われるのも………当たり前だ。


自分自身で納得してしまい、そして時計も見つからないなか、もう………消えてしまいたくなった。


坂道を下ったところにある公園の中に……ふらふらとした足取りで入っていった。


懐かしい公園。

いつもここで遊んでいた。

もちろん、遥斗とふたりで。

あのブランコも、あのシーソーも、あのタコの形をした滑り台も、砂場も、ここは全部全部…………遥斗との思い出で溢れている。

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