冷たい幼なじみが好きなんです


わたしはタコの形をした滑り台の、トンネルになっているところに入って身を縮めて座り込んだ。


あの頃は大きなトンネルだと思っていたのに……今入ってみると、とても狭く感じる。チビだけど、一応成長してるんだ。


“ここ、遥斗とわたしの秘密基地ね!”なんて言っていた自分を思い出す。


我ながらおかしく思える。

バリバリ公共の場だし、どこにも秘密要素も基地要素もない。

ほんとに笑える。

ただ純粋に遊んでいたあの頃………遥斗はわたしといて、楽しかったのかな。

それとも、わたしに付き合ってくれていただけなのかな。

遥斗はいつからわたしのことが嫌いなんだろう。

いつから我慢させていたんだろう。

……もう、我慢しなくていいよ。

思う存分、わたしに冷たくして、いいよ──



「…………いた」


暗闇のなか…………だれかの声が、わたしの耳に真っ直ぐに届いた。


すぐにだれなのか判別できなくて、心臓がドクッと恐怖の音をたてた。


「……なにやってんだよ」


トンネルのなかに身を入れてきたのは………ほかのだれでもない、遥斗だった。

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