冷たい幼なじみが好きなんです


トンネルのなかで………瞳をふせたあのとき、わたしの唇にそっと触れた生温かくて柔らかいあの感触。


あれは明らかに………遥斗の唇だった。


つまり…………遥斗はわたしに、キスをしたんだ。


『…帰るぞ』
遥斗はそれだけ言って、トンネルのなかから出た。

家までの帰り道は、なにも会話はなく…ただただ遥斗の後ろをちびちびと歩いた。

『…じゃ』
『う、うん』
そんな短い言葉を交わして、お互いの家へと入っていった──。


あれから一度も、遥斗の姿を目にしていない。


あの夜は一睡もできなかった。


焼却炉の前で百合ちゃんに言われた言葉と、遥斗の言葉とキスが頭の中をぐるぐるぐるぐる永遠に回っていた。


………どうすれば、遥斗と百合ちゃんのことでもう悩まずに済むのか。

すべてを投げ出したかったわたしは、結論は思いの外はやくたどり着いた。


遥斗の謎の言動が、わたしを悩ませている。

わたしの存在が、百合ちゃんを苦しめている。

それならば、わたしはもう二度と………遥斗と関わらなければ、いいんだ。

それ以外の解決策なんて、ない。

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