冷たい幼なじみが好きなんです
「…答えろよ」
なぜか少し強い口調で黙ったままのわたしに返事を求めてくる。
わたしもできることならさっきみたいにペラペラとしゃべりたい。
だけどこの状況に頭が混乱して、自分の心臓の音がうるさくて、うっとうしい自分をセーブしているわけじゃないのにうまく口が動かなくて、遥斗の質問にただ首を横にふった。
だってわたしは遥斗みたいに恋人なんていないんだから、こういうことなんて一度だってしたことがない。
なんでそんなことわざわざ聞くの……?
遥斗には百合ちゃんがいるんだから、わたしのことなんて、どうでもいいはずでしょ…?
わたしのことなんて、嫌いなはずでしょ……?
「……俺と先、練習しとく?」
「………っ………」
それって……この先、他のだれかとする前にってこと…?
からかうような口調でもないし、かといって真面目な口調でもない。視界は冴えてきたけど遥斗の表情までよく見えなくて、遥斗がいったいどういうつもりでそんなことを言うのかがまったく読み取れない。
そもそもわたしに遥斗の心を読み取る力なんて持ち合わせていない。
だって遥斗がわたしのことをうっとうしがっているのを、まったく気がつかなかったんだから。
なにも言えずただ遥斗の下で固まっているわたしを……遥斗はぎゅっと、自分の胸に閉じ込めた。