冷たい幼なじみが好きなんです
カーテンの前を、音を立てないように行ったり来たり。
まるで不審者だ。
わたしが男だとして、もしここが女子更衣室の前だったから即効捕まるだろう。
カーテンが完全にしまっているからだれが眠っているのか確認できない。
こっそり覗いていいかな…。
だけどもしそのだれかが起きていたら、絶対変に思われるよね。
それならむしろ、遥斗じゃないほうがいいかも。
遥斗よりまったくの他人に変に思われたほうがましだ。
そうなったらじゃあ遥斗はどこに消えたんだって話しなんだけど…。
やっぱり反対の階段を使って特進クラスに戻ったのかな…!?
そんなことを必死に考えていると。
「──ごほっごほごほっ」
カーテンのなかから、苦しむような咳の音が聞こえてきた。
──遥斗だ。一瞬でわかった。
「ごほごほごほっ…げほげほっ…」
何度も続く息が止まりそうな咳に、わたしは急いでカーテンのなかへと入った。
ベッドに横たわる遥斗の顔はひどくしんどそうで、見るからに体調が悪いことがわかった。
「う、ん、……っ」
遥斗、うなされてる……。嫌な夢を見てるの……?
ベッドのすぐそばにあるイスに腰かけ、思わず遥斗の布団から出ている右手を軽く握りしめた。