お嬢様は恋をしません。
* * *



「奏多、湊音よりちっちゃいね」




満員電車に揺られながら、莉緒が楽しそうに話す。



俺は莉緒に触れないようにするのに必死。



ドアに手をつけるはずもなく、足だけで体を支える。



…わずかな傾きも許されない。



下手すりゃ俺が莉緒に殺される。




「これでも伸びた方なんですー…っ


てか、俺より10センチ低いくせに笑うな」





莉緒がいい顔をしててやり返しをしてこないことをいいことに莉緒の頬をぷにっと潰す。



すると、莉緒は少し頬を赤らめて、視線を逸らした。



最近よく思うんだけど、莉緒思いのほか、男に免疫ないんだよね。



まぁ、あったら自分の部屋で男寝かせようとはしないだろうけど。




「私も伸びた方だもん」



「156センチしかないくせに威張るな」



「奏多だって165センチしかないくせにーっ」




かわいいな…。元がこれだったらいいのに…。
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