お嬢様は恋をしません。
「ねーねー、奏多くん」



俺の名前を呼ぶ方を振り向く。



んー、去年から一緒のクラスの子だ。




「どうしたの?」



女の子の方に体を向けて、首をかしげる。




「〜っ、あの…っ、黒く、染め直したの…?」



なぜかわからないけど少し顔を赤くして、あわあわを聞いてくる。




「うん。似合うかな?」




毛先をつまんで聞いてみると、女の子はさらに顔を赤くした。




「似合ってると思う…っ。



前のもいいと思うけど…今のも好きだな…」




「ふふっ、ありがと」




「〜っ」




女の子はグループの中に戻っていった。



そっか、あの子が見ても似合ってるのか。



ならそこそこ似合ってるんだろうな。よかった。



まぁ、地毛の色が似合わないなんて悲しすぎるよね。





「…お前ほんと、タラシだよな」



「ん?なんのこと?」



「…はぁ。…女どもが可哀想だわ」
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