今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
沙帆をお姫様抱っこで軽々運んでいく彼は、どうやら鷹取という名らしい。
しかし、この巨大なラグジュアリーホテルでスタッフが名を呼び近付いてくるなんて、一体何者なのだろうかと、沙帆は身を固くしていた。
「ちょうど良かった。部屋まで一緒に来てもらえるかな? それから、この彼女の着替えを用意してもらいたい。あと、外のプールサイドに彼女の持ち物が置き去りになっているから、届けてほしい」
次々と注文を出されたスタッフは、即座に「かしこまりました」と答え、先を小走りしてエレベーターホールへと案内する。
その間にスマホを取り出し各所へ連絡を入れていった。
「わかったら、静かについてきた方が君のためだ」
そう無表情で冷静な口調で言われてしまえば、沙帆に反論する言葉は出てこなかった。
エレベーターでスタッフの女性が指定した二十階に到着すると、先導されて鷹取は部屋へと向かっていく。
ダークブラウンのヨーロピアン調の重厚なドアを女性スタッフに開けてもらった鷹取は、沙帆を抱いたまま中へと入り、女性へ「では、手配をよろしく」と言った。