今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
「かしこまりました」と一礼した女性が静かにドアを閉め立ち去ると、鷹取は抱いた沙帆を部屋の奥へと連れていく。
再び沙帆が「あのっ」と声を上げた時には、大理石造りの広いバスルームへと身体が下ろされた。
「すぐに着替えが届く。それまでにシャワーを浴びておくといい」
見ず知らずの男性のホテルの部屋でシャワーをお借りするなんて、常識的に有り得ないこと。
しかし、状況からいって彼が下心があってシャワーを浴びることを勧めているとは思えなかった。
沙帆がそう思えたのは、鷹取が自分を助けて同じようにずぶ濡れになったからだ。
「でも、あなたも濡れちゃっているのに、私が先に使うのは――」
「寝室の方にもシャワールームがあるから問題ない」
鷹取はそれだけを言うとバスルームの扉を出ていく。
その上背のある後ろ姿に、沙帆はまた釘付けになっていた。