今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
そんな話をしながら一階の奥へと進んでいくと、健診センターや救急搬送口などが目に入る。
交差する廊下を曲がり、やがて突き当たりへと近付くと、怜士は右手にある木目調で焦げ茶色の扉の前で立ち止まった。
そこには『副院長室』とプレートが挿さっている。
なんとなく振り返ると、向かいのドアの横には『病院長室』と掲げられており、沙帆は咄嗟に「あの」と怜士に声をかけた。
「お義父様にご挨拶をした方がいいですよね?」
すると、怜士は扉を開けながら「ああ、今日はちょうどここにはいない」と言う。
「そうなんですか?」
「毎週木曜日は、看護学校の講師で病院を空けるんだ」
先に中へと入り、扉を開けて「入れ」と沙帆を招く。
「失礼、します……」
入った怜士の自室は、奥に壁に沿って多くの本棚があり、その前にデスクがある。
手前にはソファーセットもあり、それらは全て黒で統一されていた。
奥の本棚の手前にある大きな水槽が沙帆の視線を奪う。
近付いてみると、色とりどりの熱帯魚が泳ぎ、エビやイソギンチャクも見えた。
(ここが怜士さんの病院での部屋か……すごく綺麗にしてるみたいだけど、掃除にも人は入れてないって言ってたっけ……?)