今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
パッと見た印象、掃除がすごく必要な部分は特になさそうに見える。
建物自体も新しいからかもしれないけれど、部屋はすごく綺麗だ。
加えて、何かが散らかっている様子もこれといってない。
「あの、特に気になる場所とかありますか? ここを重点的に、とか」
自分の荷物を部屋の隅に下ろして、沙帆は怜士が運び込んでくれた荷物へと近付く。
すると振り返った怜士は「おいおい」と沙帆が控え目に部屋の隅に置いた荷物を取りに向かい、それをソファーの上へと移動させた。
「まさか、早速取りかかるつもりか?」
「え……はい」
迷いなく返事を返してきた沙帆に、怜士はふうと小さく息をつく。
荷物の前に立つ沙帆へと近付き、いきなり両腕を引いて抱き寄せた。
(えっ、えっ、何これ……!)
ぽすっと怜士の胸に収まり、彼の首から下がるステートが目の前で揺れる。
身体が密着した途端、沙帆の鼓動は勢いよく音を立て始めた。
「掃除は、来させるための口実だったんだけど」
「えっ……」
「真面目に仕事道具まで持ってきちゃうなら、回りくどいこと言わなきゃよかったな」