今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
通りすがった真横でボテっと音がして足を止めると、絨毯の上にスマートフォンが落ちていた。
振り返ると、すれ違った彼女はスマホを落としたことにも気付かず、先を歩いていく。
怜士が「落としましたよ」とかけた声も届かず、その足は次第に速度を上げていった。
仕方なくあとを追っていくものの、沙帆は肩からかけたバッグの片方のハンドルを落としていて、中から他にも物を落として歩いていく。
それを拾いながら何度か声をかけるものの、一向に気付く気配がないまま、沙帆は吸い込まれるようにプールにダイブした。
顔色が良くなかった気がして、怜士は咄嗟にあとを追って飛び込んでいた。
しかし、助けた沙帆に体調不良はなく、プールに落ちるほど意識が朦朧としていたのは、付き合っていた男の浮気現場に遭遇したからだと唐突に暴露された。
そしてその時、沙帆は言った。
『だから、医者は嫌なのよ』と……。