今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
その後、職場で偶然再会した縁も含めて、怜士は沙帆なら自分の要求をのんで受け入れることのできる唯一の相手だと考えた。
〝医者が嫌い〟
そう言った彼女なら、医業に従事する自分に決して執着することもない。
彼女にとって不利な点のない条件を出せば、表向きの婚約者として一定期間存在してくれるかもしれない、と。
だから、両親へ返事をした。
彼女と会ってみる、と。
「食べれない野菜とか、ないですか?」
青果コーナーを見て回りながら、沙帆は後ろに続く怜士を振り返る。
怜士はふと、食べられない野菜なんかを聞かれたのはいつぶりだろうと、考えていた。
「今は、特にない。子どもの頃は、ピーマンがダメだったけど」
怜士の返答に、沙帆はいきなりぷっと吹き出す。
「え、意外なんですけど! ピーマン、ですか?」
続けてクスクスと笑われて、怜士は眉間にしわを寄せる。
そんな笑われることを言ったつもりはない。
ムッとしたまま笑くぼを作っている沙帆の片頬をつまむと、肩を震わせて笑顔が飛んでいった。