今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
マンションに帰ってきたのは、時計の針が十八時を回った頃だった。
帰宅すると、沙帆は早速エプロンを身に付け、キッチンへと立つ。
さっきスーパーで精肉コーナーに向かった沙帆は、「入り口にあった本日の特売で、この厚切りビーフがお買い得ってあったので」と三百グラムほどの一パックを手に取った。
一体、何を作るのだろうかと怜士は横から沙帆の様子を窺う。
一番にお米を炊くと、買ってきたレタスを数枚剥がし、水を張ったボウルの中に沈ませる。
ミニトマトも数個出してその中に落とした。
続いてクレソンの束を取り出し水洗する。
その手際の良さに黙って見入っていると、沙帆は「怜士さん、暇ですか?」と小首を傾げた。
「もし暇なら、このお肉を切ってもらっていいですか? 私、お米炊けるまでの間にスープを作りたいので」
「肉を、切る? 俺が?」
「得意ですよね? 肉切るの」
そう言った沙帆はクスッと笑って「な〜んちゃって」とおどける。
どうやら仕事でメスを持つことを言っているらしい。