今夜、夫婦になります～俺様ドクターと極上な政略結婚～

夕方近く、一日の作業を終えて社用車に乗り込む。

今日は普段四人できているところ、そのうちの一人が体調不良で欠勤して、一人少ない三人での作業だったため、普段十四時過ぎに帰れるところ十六時近い時間となってしまった。


「……あ、ごめん、一本忘れてきたみたい。取ってきます」


荷物を積みながら、スプレーボトルを一本置き去りにしてきてしまったことに気が付いた。

どんなに小さなものでも、依頼先に忘れ物をしてきてはいけないというルールが決まっている。

小走りで病院の通用口を入り、階段で上を目指す。

確か廊下の隅に邪魔にならないように置いて、あとで腰袋に引っかけていこうと思ったのを忘れてきてしまったのだ。


「……あった」


予想通りの場所で目的のものを見つけ、つい独り言を呟いてしまう。

そんな時だった。


「ちょっと」


廊下の先から、聞き覚えのある声と共に自分で車椅子を押してくる姿が現れた。