今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
だけど、また胸の辺りがざわざわと騒々しくなる。
咲良の表情がどこか余裕のある勝ち誇ったような微笑を浮かべていて、不意に視線を彼女から外していた。
「でも、あなた怜士先生のことが好きでしょう?」
「え?」
「図星ね」
どこをどう見て、咲良はそう思ったのだろうか。
沙帆には図星とまで断言されるのがさっぱりだった。
「この間、怜士先生と話しているのを見た時からそう思ったわ。それに、今だって私に怜士先生の話を出されて目が動揺してたもの」
「そっ、そんなこと――」
強い口調で言いかけて、その先の言葉を押し留めた。
(だめだ、完全に彼女のペースに乗せられるところだった……。落ち着いて、大人な対応しないと)
もし言い返しでもして、彼女の心臓に負担をかけたら取り返しのつかないことだ。
何を言われても、我慢して受け流すしかない。