今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
「あら、違う? そうやって言い返そうとするあたり、怪しいけど」
「…………」
会話を拒否した沙帆を、咲良は容赦なく追い詰める。
「でもね、諦めておいてね、今のうちに。この間も言ったけど、怜士先生は私のものだから」
怜士のように受け流すくらいじゃないとダメだと、頭ではわかっていてもにこりと笑うことも難しい。
その代わりに、咲良の口元が妖しく笑みを浮かべた。
「怜士先生、私のことならなんでも知ってるのよ……私の身体も」
(え……?)
沙帆のぴくりと動いた表情を見逃さなかった咲良は、ふふっと優雅に笑ってみせる。
「だって、そうでしょう? 怜士先生は私の主治医なんだから。オペをしているんだし」
決して卑猥な意味ではないのに、濫りがわしい意味に取ってしまった自分にどきりとする。
沙帆は無意識のうちにぺこりと頭を下げ、逃げるようにその場から駆け出していた。