今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
「どうだったんですか? イケメンでしたか?」
「えぇ?」
花梨は興味津々な様子でハシゴに手をかけ、下から沙帆を見上げる。
好奇心でキラキラしている目に、沙帆はハンディクリーナーのスイッチを落とし、誤魔化すように腰袋の中を漁った。
あの時のことを思い出すと、むやみに顔が熱くなる気がしてならない。
それはあの彼が、無条件で素敵だったからだろう。
「まぁ、そうだね……結構、うん……」
「えっ、なんですかその反応!」
「あの時は、私もいっぱいいっぱいだったし……それに、もう会うこともないから――」
そんな話をしていた時だった。
台風後の眩しい日差しが差し込むガラス張りの渡り廊下に、颯爽とドクターや看護師の集団が現れた。
光を浴びているせいか、白衣の白さが際立つ。
沙帆は横目に入ったその団体から、無意識のうちに顔を背けようとした。
が――その先頭に立つ洗練された姿に、引き寄せられるように目を奪われた。