今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
呆れたような口調で、鷹取は横たわる沙帆を見下ろす。
この間はプールで、今日はハシゴからと、そういう意味だろう。
それを言われてしまうと、沙帆は一瞬言葉に詰まる。
加えて、この端正な顔に見つめられていることに、無性に鼓動が音を立て始めた。
「すみません、でした……また、ご迷惑を」
「あの調子じゃ、仕事中にハシゴから落ちるのも初めてではないだろ?」
「そっ、そんなことありません! 今日が初めてです」
胸の高鳴りを感じたのもつかの間、からかうような言葉を受けて、沙帆は強い口調で言い返す。
鷹取はフンと鼻で笑って、沙帆が横になるベッドの縁へと腰を下ろした。
腕に触れそうな近さに慌てて身動ぎ、そっと背中を起こした。
「じゃあ、俺の運が相当悪いってことだな。そういう場面に毎度居合わせてるから」
「運って……それは、あなたが、この病院の医者だったからで……」