今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
「いやぁ、心臓外科とは伺っていたけど、オフポンプ手術を。若いのに凄いな、さすがだ」
黙っている沙帆の横で、良嗣が仕事の話で相手側と盛り上がっている。
沙帆の前の鷹取は「いえ、まだまだ未熟で」と謙遜し、感じのいい笑みを浮かべていた。
「沙帆さんは、今はご自宅に?」
相手側の母親が沙帆のことを質問してくると、すかさず千華子が「そうなんです〜」と先陣を切る。
「大学を出てからは、花嫁修行をと思いまして、ね、沙帆?」
どうやらそのようなプロフィールで先方にはすでに伝えてある上、沙帆が要らぬことを口走る前に話を固めたい様子だ。
花嫁修行なんて、料理教室にすら通ったこともない。
しかし、余計な波風を立てないように「はい」と頷いておく。
それにしても、良嗣も千華子も今までのお見合いには見られない気合いの入りっぷりだと、沙帆は密かに思っていた。
よほどこの見合いを成功させて、沙帆を怜士の元へ嫁がせたいのだろう。