今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~


相手方、鷹取家も、沙帆の家系と同じく代々病院経営を行なってきている。

来年、開業百周年という記念すべき年を迎える『鷹取総合病院』の現院長は怜士の父で、怜士は現在、自分の病院と大学病院への協力医として多忙な日々を送っているという。

専門は心臓血管外科――専門分野は虚血性心疾患だと話していた。

医師である沙帆の両親と相手側との会話も医療用語が飛び交い、さっぱりな沙帆は黙って右から左へと話を受け流してやり過ごしていた。


「我々が盛り上がってしまったけど、せっかくの見合いの席だし、あとは二人で話す時間が欲しいだろ」


親たちばかりの声が飛び交う中で、怜士の父親が気を使い始める。

『あとは若い二人で……』というやつだ。

千華子も「そうよね!」と同意し、親たちが二人へと注目した。


「では、私たちが少し席を外します。沙帆さん、庭園が素晴らしいようなので、一緒に出てみませんか?」

「あ、は、はい……」


正面で怜士が淡く微笑み、沙帆の鼓動はピクンと跳ね上がる。

沙帆のぎこちない返事に怜士は「よかった」と言い、すっと席を立ち上がった。

< 59 / 247 >

この作品をシェア

pagetop