今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
本館と別館を囲うようにして作られた日本庭園は、ここの料亭の売りの一つというだけあり見事なものだった。
元々、資産家の邸宅だったという場所を買い取り、この料亭を構えたという。
しっかりと手入れが行き届いた芝。
長寿と見える松や紅葉の木は圧巻で、そこには計算し尽くされたデザイン性がある。
庭園内には橋の掛かる池へと小川が流れ込み、そのせせらぎは奥の斜面で水しぶきを上げる滝から続いていた。
玉砂利が敷き詰められた小道には、飛び石が表情豊かに並ぶ。
怜士に先導される形で趣きのある道を歩きながら、沙帆は次第に高まる緊張にどこを見たらいいのかわからなくなっていた。
席を立って出てきてから、まだ何も言葉を交わしていない。
池のそばでやっと足を止めた怜士の高い背に、沙帆は意を決して口を開いた。
「一体、どういうことなんですか?」