今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
何をどう聞けばいいのかわからず、出てきたのはそんな言葉だった。
広い庭園を望む怜士が、不意に沙帆へと振り返る。
整う綺麗な顔に薄っすらと笑みを載せたかと思うと、「どう、とは?」と小首を傾げた。
「だから、今日の――」
「それを聞くのはこっちだ。相手が俺だとわかってて来たんだろ?」
「そっ、それは……」
まさか千華子の手違いで違う相手の写真を見せられていたとは言い出せない。
わざわざ母の失態をここで説明する気にもなれなかった。
「ちょっと色々あって、今日来るまであなただって知らなかったの。だから、驚いて……」
「へぇ……だからあのリアクション」
特に深く追求してこない怜士にホッとしながら、沙帆は逆に疑問に思う。
(そんなこと言うけど、じゃあこの人は、私ってわかってて今日来たということ?私とお見合いする気で?)