今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
病院を継承するなら、独身より既婚の方がいいということだろう。
家庭を持って落ち着いている人間の方が、人からの見る目も違うものだ。
経営者はそういうメリットから、結婚を望むとも聞いたことがある。
「だから、表向き形だけでも結婚しようと思ってる」
大したことでもなさそうに怜士は言い放つ。
(表向き……形だけ?)
「婚約をしたとすれば、面倒もなくなるだろうからな。そういう意味でも、俺にとってメリットは多い」
それを聞いた沙帆は、口には出さす心の中で〝うわっ……〟と非難していた。
婚約をして結婚することにしたら解消される面倒といったら、女関係のことに違いない。
この完璧な容姿に、仕事は心臓外科医で、次期総合病院の院長というハイスペック。
周囲の女性はおろか、今まで多くの女性を相手にしてきたのだろう。
まさか、その収拾がつかなくなって結婚に逃げるのかと、沙帆は目を細めた。
(これだから、やっぱり医者って……)
そう、思いながら。
「俺との婚約をすれば、そっちの家にも都合の良い話のようだし、それでいいよな?」
「……え、ちょっ、いいよなって、何言って!」