今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~


「何それ、そんなひどいことする人が……?」

「まぁ、妬みってやつなんだろうな。恨みを買うタイプではないと思うから」


人のレポートを盗んで隠してしまうなんて、とんでもなく卑劣だ。

場合によってはその人の人生を左右してしまうかもしれない。

だけど、恨みもなしにそんなことをされるなんて、相当羨望の眼差しを受けていたのだろう。


「ただ、あんまり人とつるむタイプじゃなかったっぽいから、俺もよくは知らないんだよな、鷹取のことは」

「一匹オオカミ的な?」

「ああ、そんな感じかもしれない」


「お待たせいたしました」という声と共に、テーブルの上には豆腐ののったサラダや、黒い大皿にセンス良く盛り付けられた様々なおでんがやってくる。

湯気が立ちのぼり、出汁のいい香りが鼻腔をくすぐった。

樹は早速取り皿を手に、「沙帆、おでんはこんにゃくと玉子が好きだったよな?」と楽しそうに取り分け始める。


「ああもう、お兄ちゃんいいよ、私がやるから」

「いいって、黙ってお兄ちゃんにやらせなさい」


樹は久しぶりに会った沙帆を甘やかしたいらしく譲らない。

仕方なく、沙帆はサラダを取り分け始めた。

< 79 / 247 >

この作品をシェア

pagetop