今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
「何それ、そんなひどいことする人が……?」
「まぁ、妬みってやつなんだろうな。恨みを買うタイプではないと思うから」
人のレポートを盗んで隠してしまうなんて、とんでもなく卑劣だ。
場合によってはその人の人生を左右してしまうかもしれない。
だけど、恨みもなしにそんなことをされるなんて、相当羨望の眼差しを受けていたのだろう。
「ただ、あんまり人とつるむタイプじゃなかったっぽいから、俺もよくは知らないんだよな、鷹取のことは」
「一匹オオカミ的な?」
「ああ、そんな感じかもしれない」
「お待たせいたしました」という声と共に、テーブルの上には豆腐ののったサラダや、黒い大皿にセンス良く盛り付けられた様々なおでんがやってくる。
湯気が立ちのぼり、出汁のいい香りが鼻腔をくすぐった。
樹は早速取り皿を手に、「沙帆、おでんはこんにゃくと玉子が好きだったよな?」と楽しそうに取り分け始める。
「ああもう、お兄ちゃんいいよ、私がやるから」
「いいって、黙ってお兄ちゃんにやらせなさい」
樹は久しぶりに会った沙帆を甘やかしたいらしく譲らない。
仕方なく、沙帆はサラダを取り分け始めた。