今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
夜道を歩くなと樹にタクシーに乗せられた沙帆は、二十一時過ぎに自宅へと到着した。
広尾に一軒家を構える沙帆の自宅は、地下一階のある地上二階建て。
沙帆が生まれた時にはここにすでに住んでいた。
子どもの頃は、両親が家にいなくても帰宅をすれば吉永が必ず帰りを待ってくれていた。
しかし、沙帆が成人をしてからは吉永の訪問は定期的なものとなり、帰ればいつでも出迎えてくれることはなくなった。
明かりの灯らない無駄に大きい家に帰るのは、自宅だというのに不気味に感じるときもある。
しんと静まり返って、冷たく寂しいのだ。
しかし、今日はリビングに明かりがついていた。
玄関を入り、そのままリビングへと顔を出す。
「ただいま」
「あら、沙帆、おかえりなさい。遅かったのね」