今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
リビングには、ソファーに腰掛け、珍しく映画かドラマか、何か海外ものの作品を見ている千華子の姿があった。
「うん。お兄ちゃんとご飯食べてきた」
「そう。良嗣さんが帰ってきたかと思ったわ」
「お父さんももう帰るの? 珍しい」
さっきおでんを食べながら、次に顔を合わせたら話そうと答えを出してきた。
勢いがついている今、話してしまおうと千華子の元へと歩み寄っていく。
「今、ちょっと話いい?」
再び画面へと向いていた顔を沙帆へと振り返り、千華子は「どうしたの」と流れる映像を一時停止させた。
ソファーの横に立ったまま、両手に持つバッグの持ち手をぎゅっと握り締める。
自分を見上げる千華子の顔をしっかりと見て、沙帆は静かに口を開いた。
「この間の、お見合い……お断りすることに決めたから」
どうしてと理由を聞かれたらなんと言おうかと、結論を口にしてから思った。
納得をしてもらえそうな答えが見当たらない。
じいっと沙帆を見つめる千華子の真顔に、沙帆は無意識に息を止めていた。