今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
「あら、そう。今までで一番推した話だったんだけど、残念ね」
身構えたわりには千華子の反応は意外にもあっさりしたもので、沙帆はふっと身体の力が抜ける。
「いずれは、あの鷹取の病院の院長婦人になれるっていうのに。医者にならなかったあなたにはもってこいの相手よ?」
「うん……でも、いいの」
「それに、あんないい男、そうそうお見合い相手に現れないわよ?」
最後の最後までセールスポイントを述べてくる千華子に、沙帆は「ごめんなさい」と話を終わらせようとする。
「……わかったわ。あ、ちょっと待ってて」
おもむろにソファーを立ち上がり、パタパタとスリッパを鳴らしてリビングを出ていく千華子の姿を目に、肩の荷が下りたような気分だった。
ここのところずっと、早く結論を出さなくていけないと追い詰められていたから尚更だろう。
これでしばらくは、またお見合いだと言い出したらその段階できっぱりと断ろう。
そんなことを思っていると、千華子がリビングへと戻ってきた。
「これ、見てもらえる? 先方がお待ちだから、日取りを決めたいのよ」