今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
「鷹取さんの話を断るなら、すぐにでも連絡したいの。いつがいい? あちらの都合を聞いて、一番早い日取りで合わせられる? それでいいかし――」
「ちょっと待ってよ!」
千華子の声を遮るように、沙帆は声を上げていた。
広いリビングにその声がこだまする。
「沙帆……?」
「次から次へとお見合いお見合いって、そんなに急いで結婚しなきゃいけないの⁈」
「沙帆……そうよ、あなたには早いところ有望な方と一緒になってもらって、いずれは樹の力にもなってほしいの」
沙帆の荒げた声に動じることなく、千華子は諭すような口調で淡々と言葉を並べる。
「わかるでしょう?」
「……結婚が、したくないわけじゃない。でも、私はお母さんたちを見てたら、医者とは結婚したくないって思ってきたの」
「沙帆……」
「いつも忙しくて、二人が一緒にいる時間が少なかったのだって知ってる。家にもあまり帰れなくて、私たち子どもとだって一緒にいる時間は少なかった」