今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
怜士が沙帆を連れ向かったのは、駐車場から地上三十六階にあるタワーマンションの一室だった。
慣れた様子でマンションエントランスに入り、コンシェルジュカウンターを通過し、三基あるエレベーターの一番奥のものに乗り込んだ。
沙帆はその間、自分の手を引く怜士に声をかけることもできず、ただ黙って身を任せていた。
三十六階フロアの角部屋が目的の部屋だった。
やはり慣れたことのようにカードキーで部屋を解錠し、黒く重そうな玄関扉を開く。
同時にオートで照明がパッと点灯した。
(付いてきちゃったけど、これってこの人の住まい……?)
何か聞く前に背を押され、沙帆は扉の向こうへと足を踏み入れた。
「あの、ここは」
沙帆を横切り、怜士は広い玄関の隅にダークブラウンカラーの革靴を揃えて脱ぐ。
そのまま磨かれたように光る白い内廊下を奥へと歩いていってしまった。