今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
「ちょっと、待って!」
慌ててスニーカーを脱ぎ、怜士のあとを追う。
コンシェルジュ付きのエントランスや、ここに上がるまでのマンションの雰囲気で想像はしていたけれど、広がったリビングは沙帆のそれを遥かに上回っていた。
角に位置するリビングルームは、高い天井まで続くガラス窓が部屋を囲う作りで、百八十度高層からの景色を眺められる。
今は散りばめた光の粒がキラキラと宝石のように輝き、美しい夜景が広がっていた。
怜士はリビングのその大きな窓へと向かってゆったりと歩みを進める。
沙帆は三メートルほどの距離を取ってそのあとへと続き、怜士が足を止めると倣って立ち止まった。
「ここ……あなたの?」
と聞いてみたものの、部屋の中には全く生活感はなかった。
家具も無ければ、ちょっとした荷物すらもなく、出入りしている形跡がない。
まるで物件を見に訪れたような状態だ。
「結婚が決まったら住むために用意した部屋だ」
(ああ、なるほど……)
「で、この間の話は考えたか?」