今夜、夫婦になります~俺様ドクターと極上な政略結婚~
怜士にマンションへと連れて行かれてから、三日後のこと――。
いつも通り仕事を終え自宅へ帰ると、玄関を入ったところで奥から吉永が姿を現した。
「沙帆さん、お帰りなさい」
「吉永さん、今日は来てくれる日だったのね?」
「ええ、奥様からお昼に連絡をいただいて……それより」
そう言って、吉永が〝こちら〟という所作で示した先に、男性ものの黒い革靴が揃えて置かれてある。
沙帆が小首を傾げ「誰か来ているの?」と聞くと、吉永は玄関を上がった沙帆に身体を寄せた。
「鷹取様という男性が先ほど……」
「えっ⁈」
沙帆の驚いて上げた声が玄関に響く。
「沙帆さんがこの間、お見合いされた方だと伺いました。今回の縁談は話が進んでいたのですね」
「あ、うん、でも――」
説明もそこそこ、沙帆はリビングの扉に向かって歩いていく。
迷いなくドアを開くと、両親に向かい合ってソファーに掛ける怜士の姿が目に飛び込んだ。