短編集 【善人のフリした悪人】
その翌年の12月、
5歳になった少女が、上達したピアノと進化を続ける才能溢れる声でクリスマスの歌を歌うビデオメッセージがサンタ協会に届けられた。
少女の歌声と可憐さと透明感に、
トムも、そして他のサンタ達も頬を緩ませた。
それからも、トムは孤児院と同じく、
少女の家へプレゼントを贈り続けてきた。
異変を感じ取った、
6年前のイブも・・。
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「リーダー。」
「お、お帰りなさいトムさん。」
「・・・・・・。」
「・・?どうした?」
「カナちゃんの様子が・・なんとなくおかしかった・・気がする。
あの子のあんな無表情な寝顔・・初めて見た。」
「おぉカナちゃんか。
あの子ももう12歳になった・・・
ってそう言えば今年はビデオメッセージが届いていなかったな・・?」
「私も気になってたんだ。
ご両親も何も言ってこなかったし・・。
今年は新しい楽譜と舞台発表用のドレスをプレゼントしたんだけど・・あの子の表情がずっと引っ掛かって・・。」
「・・分かった。
協会のほうで少し調べてみましょう。」
「すみませんリーダー。
ありがとうございます。」
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