短編集 【善人のフリした悪人】


トムの眼前に、他とは一線を画した立派な家が見えてきた。


少女の部屋がある2階のベランダでプレゼントを持ったトムがソリから降り、トナカイはそのまま庭へと降り立った。


ネコえもんに借りた通り抜けフープを使い部屋の中へと入ると、

暗闇でも分かる真っ白なベッドに、
今年で18歳になる少女が眠っていた。



サンタ協会が“子供”と定義するのは16歳未満。


しかし、この少女は唯一の例外としてサンタ協会が認めていた。




---------------

「・・・ホントですか・・・?」


「・・残念ながら・・。」


「・・・・・・・・・・。」


「・・・・・・・・・・・。」


「誰が・・そんな酷いことを・・。」


「いきなり後ろから顔に袋を被せられて、
相手の顔は見ていないらしい・・。

複数の人間がいたことだけは分かっているそうだけど、警察の捜査も難航しているようです。」


「カナちゃん・・・。」


「・・・声が出なくなったらしい・・・。」


「え・・?」


「心的外傷を負った影響から・・・カナちゃんは声が出せなくなったそうです。

ご両親がサンタ協会に連絡してきました。

“だからもう、うちの子にはプレゼントを贈らないでほしい”と・・。」



---------------



< 93 / 130 >

この作品をシェア

pagetop