短編集 【善人のフリした悪人】
トムの眼前に、他とは一線を画した立派な家が見えてきた。
少女の部屋がある2階のベランダでプレゼントを持ったトムがソリから降り、トナカイはそのまま庭へと降り立った。
ネコえもんに借りた通り抜けフープを使い部屋の中へと入ると、
暗闇でも分かる真っ白なベッドに、
今年で18歳になる少女が眠っていた。
サンタ協会が“子供”と定義するのは16歳未満。
しかし、この少女は唯一の例外としてサンタ協会が認めていた。
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「・・・ホントですか・・・?」
「・・残念ながら・・。」
「・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」
「誰が・・そんな酷いことを・・。」
「いきなり後ろから顔に袋を被せられて、
相手の顔は見ていないらしい・・。
複数の人間がいたことだけは分かっているそうだけど、警察の捜査も難航しているようです。」
「カナちゃん・・・。」
「・・・声が出なくなったらしい・・・。」
「え・・?」
「心的外傷を負った影響から・・・カナちゃんは声が出せなくなったそうです。
ご両親がサンタ協会に連絡してきました。
“だからもう、うちの子にはプレゼントを贈らないでほしい”と・・。」
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