焦れ恋ロマンス~エリートな彼の一途な独占欲
「ちょっと蒼? もうひとりで歩けるから」

それに部屋まで数歩じゃない。

なのに彼は「だめ」と言って私を下ろしてくれない。

「さっきは寝ようかと言ったけど、今夜もまだ寝かせたくないし」

「えっ?」

ドキッとなる私の頬に彼はキスを落とす。サラサラの髪も風に揺れて頬に当たりくすぐったい。

ゆっくりと離れていくと、彼は愛しそうに私を見つめる。

「旅行から帰ったら、こうして杏に触れていられる時間はまた少なくなる。だから今夜もたくさん杏に触れさせて」

そう、だよね。蒼は帰ったらまた長期の航海に出る。会えない日々がはじまるんだ。

こうして二十四時間、ずっとそばにいて触れ合える日々はしばらくお預けになるんだ。そう思うと寂しくなり、彼にギュッとしがみついた。

「……うん、たくさん触れて」

思っていること、伝えたいこと。時には恥ずかしいことでもしっかり言いたい。だって言葉にして伝えたい時に、彼はいないかもしれないから。
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