総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
総長さんはどうして高校に行かなかったんだろう。
わたしの通っていた中学では全員が進学していた。
だから、その年で社会に溶け込んでる総長さんは、やっぱりすごく大人に感じるなあ。
あなたは、きっと
わたしの知らないこと、いっぱいいっぱい知ってるんだろうな。
「総長さん、どこで買い物するんですか」
「その……総長さんってやつ」
「へ?」
「ずっとそう呼ぶつもりか?」
「……あ」
無意識のうちに、総長さんだけ名前で呼んでなかった。
「まあ。俺は気にしねえが」
「では、幻さんで!」
他にも呼び名あるのかな。
幻と呼ばれているのしか聞いたことがない。
到着したのは、ここらで一番の大型ショッピングモールだった。
生活するのに最低限必要なものはおろか、専門店も多く、一度に色んなものを揃えられるらしい。
その分お客さんも多いかと思ったけれど、平日は比較的ゆったり見て回れるそうで。
レジに長時間並ぶことも人混みに紛れることもなく、スムーズに買い物を進めることができた。
同じ年くらいの女の子と何度もすれ違った。
見たことがない制服の、知り合いでもない子たちなのにクラスメイトに似ている子を見つけてゾクっとした。
(……なにやってるんだろ)
ここに、あの子たちが、いるわけないのに。
「ちょっと。あの人……カッコよくない?」
幻さんは、目立つ。
ただでさえ長身なのにオーラがあるから。
「てか。クロムの総長……?」
その正体に気づく子もいた。
「あんな感じだったっけ」
「別人じゃないかな。なんか柔らかくない?」
「そっか。女の子といるわけないしね」