総長さんが甘やかしてくる①(※イラストあり)
あるとき、おばさんの息子の一人が
調理場に立つわたしに向かってこう言った。
【よく育ってんな。俺のドレイになるか】
異性への好奇心からか。
単純にわたしのことが嫌いで虐めたいのか。
理由なんてわからないけど。
【身体使って奉仕しろよ、夕烏】
【いい思いさせてやるから】
触れられたわけじゃない。
殴られたわけでもない。
――提案されただけ。
はやい話、彼が喜ぶようなこと(……身体を使えというくらいだから恥ずかしいことを要求するつもりだったと思う)をした代償に、わたしにまともなご飯を与えたり、物を買ってやるというものだった。
あんな提案をされたのは、あとにも先にもその時だけで、深い意味などなく、からかっていただけかもしれない。
本人が覚えているかもわからないけれど。
きっとわたしは、あのとき彼に怯えていた。
わたしの知っている男の人といえば、優しいパパだけだったから、目の前にいる彼が別の生き物のように見えたのかもしれない。
もちろんそんな提案は受け入れていない。
『お断りします』
わたしの反応を鼻で笑ってみせた彼は、たしかにおばさんの血を引いていると感じずにはいられなかった。