イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「ああもう、こんなにがんばっても結局はエレオノーラかポーレットが王太子妃になるなら、どれだけ勉強したって無駄じゃない。さっさとどっちかに決めてくれないかしら」

 家柄、財産、知識などなど、王太子妃として必要なものはたくさんあるだろうが、アディはそのどれにおいても、自分が他の二人に優っているものがあるとは思えなかった。

「え?」

 すると、意外なことを聞いたようにエレオノーラが目を瞬いた。それを見たアディも目を丸くする。

「え? って……エレオノーラは早く決定して欲しいと思わないの?」

「ああ……そうね。別に決まれば決まったでいいし、このまま講義が続いても……悔しいけれどあの執事の講義はこのわたくしが聞くに値するだけの価値はあると思うし……」

 素直に、ルースの講義が面白い、とは口にしないエレオノーラである。

 珍しく煮え切らないエレオノーラに、アディとポーレットは顔を見合わせる。

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