イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「好きというか……必要だから、かな」

「一人じゃ練習にならないでしょ。ねえ、僕でよかったら相手しようか?」

「あなたが?」

 青年は、なぜか嬉しそうに言った。

「うん。ダンスなんて久しぶりだ」

 嬉しそうに言った青年は、座り込んだままのアディに手を貸して立たせる。向かい合ってみると、ひょろりとしてはいるがアディより背が高い。ちょうどルースと同じくらいだ。

「レイディ、一曲お相手願えますか?」

 少し芝居がかった様子で言う青年に、アディも仰々しく礼をしながら挨拶を返した。

「ええ、喜んで」
< 125 / 302 >

この作品をシェア

pagetop