イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「僕を口説くとは、なかなかお目が高いね」

「くど……っ! そんなつもりじゃ……!」

 真っ赤になったアディが反論しようとすると、突然、青年の足がとまった。アディの背後に視線を送ると、アディの手を離す。

「ごめん、もう行かなくちゃ」

「え? ちょっと……」

「じゃあね。かわいい天使さん」

 ひらひらと手を振ると、青年は足音もなくもときた立木の向こうへ消えていった。

 同時に、背後でがさりと茂みが動く音がして、アディは振り返る。するとそこには、驚いたような顔でルースが立っていた。
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