イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「アデライード様? ここで、何を?」

 今度は落ち着いてアディは、すましたご令嬢の顔で答えた。

「ダンスの練習を」

「ダンス?」

「ええ」

 ルースはさりげなくあたりに視線をくばる。

「今、ここに……」

「はい?」

「……いえ、なんでもありません」

 ルースは、あらためてアディに視線を向けた。

「もう夜も遅いです。たとえ王宮内とはいえ、淑女が出歩く時間ではありません。早く部屋にお戻りください」

「わかりました」

 ルースに背を向けたアディは、ついてくる気配にルースを振り返った。
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