イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「あの、なにか?」

「お部屋までお送りいたします」

「一人で、帰れますわ」

「言ったでしょう? このような時間に、おひとりで歩かれるものではありません」

「はあ……」

 部屋までの道を、二人は無言で歩いていく。なんとなく気まずくて、アディは口を開いた。

「あの……」

「なんでしょう」

「テオフィルス様は、お元気でいらせられるのでしょうか」

 ルースは、ちらり、とアディを見た。

「気になりますか?」

「……すこし」

 しばらく無言で歩いていたルースは、ぽつりとつぶやいた。

「とりあえず、生きてはいます」

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