イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
フィルは、またくりんと目を丸くして、備え付けのベンチに腰掛けた。

「ここの離宮にいる人間なら、誰でも知ってるよ。こわーい執事だ」

「怖いんだ」

 フィルのおどけた言い方に、アディは弾かれたように笑った。その様子を見て、フィルもにこにこと笑う。

「アディの笑顔は、本当に可愛いね。いつもそうやって笑っていればいいのに」

 言われてぱっと顔を赤くしたアディだが、そういえば王宮に来てから、こんな風に声を出して笑ったのは初めてだと思い当たる。

 ずっと淑女でいるようにおとなしくしてきたアディだが、久しぶりに教会の友人たちと話しているような気分になった。
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