イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「でも、結婚するなら好きな人と、って思わなかったの?」

 アディは、まじまじとフィルを見つめる。

「フィルは貴族じゃないの?」

「なんで?」

「だって、貴族の結婚なんて政略結婚が当たり前ですもの。好きだの嫌いだのなんて本人の感情が優先されるとは思わないわ」

 それは少し嘘だった。両親がお互いに心から愛し合っていたことをアディは知っているし、二人はアディの理想だった。

 アディの言葉は、まさに政略結婚をしようとしている自分への言い訳と、単なる強がりだ。

「貴族にだって感情はあるよ。もし好きな人がいたら、その人と一緒になりたい、って思うのが普通でしょ」

 自分の言葉を否定されて、アディは嬉しくなる。
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