イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「ルース!」

 ルースは、冷たい視線をフィルに向ける。

「姿が見えないと思ったら……なぜ、あなたがここにいるのです?」

「ほんの一休みだよ。息抜きに、未来の王太子妃と少しお話を」

 睨み殺すような視線をものともせずに、フィルはにっこりと笑った。額を押さえながら、ルースはため息をつく。

「王太子妃はまだ決定してはおりません。……あなたはこんなところにいてはならないでしょう。ちょろちょろと出歩いていないで、早くお戻りください」

「わかったよ。でも、あまり僕のかわいいアディをいじめないでよね」

 じゃあね、と一言残して、フィルは軽い足取りで離宮へと戻っていった。その背を見送ってアディは、ルースを見あげる。

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