イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
少しだけ、ルースの目が見開かれた。

「……なぜ、それを?」

「フィルから聞いたのです。私も王太子妃候補であるなら、気をつけるように、と」

 どうやらルースは、二人の会話を聞いていたのではなさそうだった。

 眼鏡をかけ直すと、ルースは小さくため息をついた。

「余計なことを。……本当です。ですが、あなたが心配することはありません。醜い権力争いなど、どこにでもある話です」

 醜い権力争い。確かにアディは、そういった闇も知っている。国王の座は、国の一番頂点にあるのだ。当然そういったものと無縁ではないことを、考えるべきだった。

 アディは、今こそ王太子にとって、安心できる王太子妃が必要なのだという事を実感した。

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