イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「殿下には必要ありません。彼は、生きていくためにすべてを疑う必要があった。のんきに人を信じていては、ここまで生きてこられなかったでしょう。ですから今でも殿下には、信じる相手などいないも同然です」

「ルースのことも、信じてはいないのですか?」

 アディが聞くと、ルースは意外なことを聞いたように目を見開いた。そして短い沈黙のあと、ふ、と笑った。

「なるほど。確かに、おっしゃる通りですね」

「私たちのうちの誰が妃となっても、きっと殿下を支えることのできる妃となるでしょう。それまで、ご自分が殿下の信頼に足ると自負があるなら、あなたが殿下を守っていてください」

 陰りのないアディの眼差しを、ルースは眩しいものでも見るように目を細めて見つめた。
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