イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「ル、ルース……?」

「フィルの匂いがする」

 言われて、アディは先ほどフィルに抱きしめられたことを思い出した。わずかに残る甘い香りは、確かに自分のものではない。

「あ、さっき……」

 言いかけて、口をつぐむ。男性に抱きしめられたなど、言えるわけがない。

「フィルに、何をされました?」

 ルースの顔がさらに近づいてきてアディは後ずさろうとするが、腕を掴まれていてそれ以上は動けない。

「な、何も……」

「言いなさい。何かされましたか?」

「されてません」

 嘘をつくことに慣れていないアディは、耐えられずに目を逸らした。

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