イジワル執事と王太子は伯爵令嬢を惑わせる
「……あなたから他の男の匂いがするのは気に入らないですね」

 そうつぶやくと、ルースはアディを引き寄せて自分の胸に抱きしめた。

「ル、ル……!!」

「静かに。人が来ますよ」

「でもっ……!」

「黙って」

 アディを抱く腕に、力がこめられる。ルースがアディの髪に顔をうずめて言った。

「このまま、あなたを私のものにしてしまいましょうか」

「!!」

 アディの胸が、どきどきと早い鼓動を刻む。押し付けられたルースの胸からも、フィルと同じ甘い香りがした。おそらく、城で使っている香かなにかなのだろう。

 けれどそれは、同じようでいてフィルとは違う。やはりルース独特の香りだ。
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